本研究会は、愛玩動物に対し、リポソーム複合体(特許第5979385号)の一種であるICG誘導体修飾リポソーム(ICG-Lipo)に関する臨床試験を実施することにより、獣医領域に於ける「光免疫治療法」の確立を目指しております。
ICG-Lipoに関しましては、2011年より、動物実験による安全性と担癌マウスによるがん治療への有効性を確認した後、2012年より、愛玩動物の自然発症症例に対する光線力学療法(PDT)による抗腫瘍効果の検討を実施したところ、良好な治療成績を得ることができました。ところが、免疫不全動物であるヌードマウスを用いたPDTによる抗腫瘍効果を検討したところ、ICG-Lipoを用いたPDTにおいては、光照射によって誘導される獲得免疫機構が重要な役割を担っていること(光免疫誘導)を示唆する結果が得られました。そこで、2014年、鳥取大学・千葉大学・民間企業3社(飛鳥メディカル・東京医研・立山マシン)の合同による「産学連携コンソーシアム」を形成し、ICG-Lipoを用いたPDTによる抗腫瘍効果である「光免疫治療法」を詳細に検討するための臨床研究を行ってきました。
一般社団法人 獣医光免疫治療研究会の会長就任に際して、ご挨拶申し上げます。
生命はその誕生以来、自然界の光である太陽光の恩恵を受け続けてきました。そして現在、人類最大の発明とされる人工的に作り出した光、すなわちレーザー光による生命科学への貢献を抜きにしては医療・獣医療を語ることはできないでしょう。今やレーザー光に代表される光医療は、生体に対するダメージをできる限り少なくする低侵襲治療という概念のもとに大きく進歩を遂げました。がん治療においても低侵襲治療とQOLという考え方を優先した治療も見直されるようになりました。
まさにこのような背景の中、2014年に本研究会の前身である「産学連携コンソーシアム」が構築されました。そして愛玩動物に対し、ICG誘導体修飾リポソーム(ICG-Lipo)を用いたPDT(Photodynamic Therapy:光線力学療法)による抗腫瘍効果である「光免疫治療法」に関する臨床試験を実施することにより、獣医領域に於ける「光免疫治療法」の確立を目指し、臨床研究を行ってまいりました。この度、「産学連携コンソーシアム」の研究期間の終了に伴い、“より一層の臨床データの集積”と“動物医薬としての認可取得”を目指し、「一般社団法人 獣医光免疫治療研究会」を設立することとなりました。
現在までに多くの腫瘍性疾患や炎症性疾患に対する治験症例が集積されましが、このようなQOLを配慮した伴侶動物への低侵襲治療は時代の流れであり、特にPDTはまさにそれに適応した治療法であると同時に、 一方ではエビデンスに基づく有効性と安全性が要求されます。また、臨床研究に伴うコンプライアンス遵守におきましても会員の皆様方にはこのような状況をご理解いただき、獣医療の発展に向けてなお一層のご協力とご支援をお願い致す次第でございます。
一般社団法人 獣医光免疫治療研究会 会長
渡邊 正俊